さて、では少し、掛け軸の話をしましょうか。
前回、掛け軸の話を書いてから既に1年を経過しております・・・
そんな前だっけ、と。
まぁ、毎月早いとか速いとか書いており、くどいのでその件は今回は触れずにおきますが、書きたいなぁと思っていても中々腰が重く。
日本画の画材についてのブログも書きましたので、日本画も久しぶりに制作過程を写真撮りつつ描きたいなぁと思いつつ、一歩も踏み出せていないですね。
今年度こそは、絵をほんの少しでもまた復活したいです。
「10年後に無くなる職業」なんてのを時々テレビでやっていますが、残るのは絵だとか音楽だとか、伝統文化、芸術の部分のみと言われています。
寂しい話ですが、それが現実なのでしょう全部機械に取って代わられる・・・と言いつつも、仕事で絵を確立するのはとても難しい事は学びました。
ですが、せっかくこういう芸術にも身を置いた経験がありますので、ごく僅かでも火だけは消さないようにしたい、美術的思考を忘れたくない、そんな想いです。
いつものように道を反れましたが、掛け軸の話に戻しましょう。
掛け軸を独学で研究し始めたのが2010年の9月でした。当時、インターネットで手に入る情報などほんのちょっとでした。
軸装しますよ、というショップは検索かかるけれど、製作方法について明かしている人は殆どいらっしゃらなかった。
調べる為、手に入りそうな本は全部買いましたし、東京にも表装を習いに行きました。
掛け軸の事を書くにあたって、まずは日本画の裏に和紙を貼って丈夫にする、という事から順を追って書き始めるのが常套なのですが、それじゃ面白くないので、誰もが興味があるだろう「風帯」、予告通りコレから始めてみます。
風帯は「ふうたい」と読み、このブログの一番上の写真、掛け軸から垂れ下がるプラプラした物体の事を呼びます。
掛け軸を勉強する前、頭の中で掛け軸を空想した物には、こんなプラプラは付いていませんでした。
なので、見た時ビックリしました。何・・・コレ?
答えを書きますと、
掛け軸の文化が始まったのはお隣の中国ですね、当時、掛け軸は外で見て楽しむ物だったそうです。
外に掛けておくと、鳥がやって来ては大事な軸を汚してしまう、だから鳥除けの道具が必要→掛け軸に風が当たると揺れる鳥除けを付けちゃえば、いちいち棒で追い払わないで済むんじゃないの、って事で生まれたのが風帯。
え?
そんな物??
揺れないよね。多分アレを揺らすには、相当な強風が必要です。外では見ていられないくらいの風でしょう。
それもそのはず、
今現在日本で主流になっている機械表装は、この風帯をボンドで接着しているものが殆どでしょう。
これは外注して作ってもらった掛け軸なのですが、このように、二枚の紙を表裏に重ね、袋状に完璧に貼り合わせています。
カッチカチですね。
ちなみに、仕舞う時はこうやって折り曲げて丸めます。
伸ばしたままクルクル巻くと巻きグセが付いてしまって、箱から久しぶりに出した時に風帯がクルンって反ってしまうからです。
あまり良い写真ではなかったので、私が作った物で急遽比較してみました。
同じ指で支えているのですが、
上のピンとなっているのがボンド貼り付けで、ダラーンとなっているのが「くけ縫い」という手法で手縫いした風帯です。
ぐったりしている方なら揺れそうかなぁ、と思いますが、今やボンド貼りが主流な為、
職人さんがこういうくけ縫いをした風帯を作ると
「オタクでこしたえてもらった掛け軸の、二本ぶら下がっているネクタイのようなものの横がほころびている、これじゃ困るので直してくれ」というクレームが入ったりするそうです。
(「誰でもできる裏打・掛軸教室」小池丑蔵著より)
このくけ縫い、をする前は、ボンドをちょんちょんと等間隔で付けていく止め方もあるみたいで、しばらくそれでやっていたのですが、
調べていく過程で「くけ縫い」というのが本来の方法と知り、どうせ「ほころび」と言われてしまうのなら縫おう、と練習しました。
その「くけ縫い」っていうのが10年前では検索できずに困った過去の話なのです。
今は、くけ縫いで簡単に検索できますね。
とは言っても、どのように風帯を縫うのか、非常に気になりますよね?
あ、ならないですか。笑
まぁ、いいです、とりあえず、今回はここまで。
次回、一年後かもしれませんが、続きをお楽しみにお待ち下さい。